研究概要
有田焼の技術・伝統を継承しつつ新しいスタイルでやきものの可能性に挑んでいます。 有田焼を通して肥前地区の魅力を活かす
日本磁器発祥の地である有田で産業としての窯業に着目し、産業陶磁器のデザイン表現や新たな有田焼の可能性を研究しています。さらには、肥前窯業圏一帯を学びの場としてフィールドワークを行い、長きにわたって培われてきた有田のポテンシャルを活かす活動を行っています。
■伝統的技法と新しい素材・技術の融合
日本磁器発祥400年の歴史を誇る有田でも、後継者や人手不足の問題、価格競争、原材料の枯渇など、伝統産業として厳しい状況があります。その現実を踏まえた上で、有田がこれまでの歴史の中で試行錯誤しながら昇華させてきた技法や技術、知識をしっかりと継承しつつも、未来へ繋げる産業として存続させていくにはどうすれば良いかを考えています。
その一つが、新しい素材や3Dプリンターなどのデジタルデザインツールを使ったやきものの研究です。すでにいくつかの窯元でも将来を見据えて新たな取り組みを行っていますが、今後は職人のノウハウや感性をデジタルとどう融合させていくかが課題になってくると考えています。
■時代に即したサスティナブルな取り組み
伝統工芸・民芸など日本文化の思想に裏打ちされた素晴らしいプロダクトに学びながら、産業・デザイン・陶磁に内在する文化・思想を、日常のやきものづくりに反映させたいと思っています。同時に、産業廃棄物となる石膏型をシリコン素材で代用する研究や、やきものの製造工程で出てくる焼成品の廃棄物の再利用方法の研究、作品への応用など、サスティナブルな取り組みにも力を入れ、時代に呼応した陶磁器の可能性を探求しています。
また、やきものは焼成時に二酸化炭素を排出しますので、昨今の世界的な環境問題やSDGsの観点からも今後の課題になってくると考えています。
有田は歴史的にも海外との交流を通して発展してきた町です。有田キャンパスでも交換留学プログラム「SPACE-ARITA」を運営し、留学生教育にも力を入れています。ドイツのブルク・ギービヒェンシュタイン芸術デザイン大学ハレや、オランダのデザインアカデミーアイントホーフェンなどから留学生を受け入れ、互いに刺激を受けながらやきものに特化したプログラムを行っているところです。
今後は国内外の様々なジャンルの方と関わり、やきものにとどまらず、有田や肥前の良さを発信していけるような関係性を築きながら研究を続けたいと考えています。
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①『bubble』、2021年、L:W225×D210×H60(mm) / S:W150×D150×H47(mm)
②『Ring』、2013年、φ240×H55(mm)
③『house』、2013年、φ243×H10(mm)
④『日々』、2020年、器:W187×D110×H37(mm) / 皿:W188×D110×H17(mm)
/器と皿のスタッキング:W188×D110×H40(mm) -
①オランダのデザインアカデミーアイントホーヘンでのワークショップの様子
②③ドイツやオランダの留学生のプレゼンテーションや授業の様子
④有田町でのフィールドワーク/泉山口屋番所跡にて
⑤⑥有田町でのフィールドワーク/陶山神社にて
MESSAGE
肥前地区が培ってきた陶磁器産業の叡智を活かしつつ、現代の技術も取り入れ、時代に呼応した陶磁器の可能性を探求します。また、専門分野外の方や海外の方との交流を通して新たなやきものの可能性を見出し、肥前地区の陶磁器産業へ反映させたいです。
主要業績
- 三木悦子, 田中右紀.「石膏型における鋳込み成形技法の表現の可能性に関する研究-圧力鋳込み成形技法と色泥漿を用いて-」佐賀大学 文化教育学部付属教育実践総合センター, 佐賀大学教育実践研究第31号: 187-300(平成26年11月)
- 三木悦子, 湯之原淳, 田中右紀, 甲斐広文.「SPACE ARITA 留学生教育実践研究Ⅰ-リノ・クレッセンス: デザインアカデミーアイントホーヘン(オランダ)-」佐賀大学 芸術地域デザイン学部研究論文集 第4号: 9-58(令和3年3月)
- 田中右紀, 湯之原淳, 甲斐広文, 三木悦子.『肥前陶磁の「技法・技術」vol.1 』佐賀大学 文化教育学部(平成26年10月)
- 田中右紀, 湯之原淳, 甲斐広文, 三木悦子.『肥前陶磁の「技法・技術」vol. 2 』佐賀大学芸術地域デザイン学部・肥前セラミック研究センター(令和2年11月)