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有明海生物に共在する微生物の探索および機能解明

【現所属】三重大学 大学院生物資源学研究科生物圏生命科学専攻
【旧所属】佐賀大学総合分析実験センター(令和5年3月末迄)

水谷 雪乃 助教

Mizutani Yukino

博士(学術)

研究分野

海洋微生物学、分子生物学、藻類学

キーワード

微生物、海苔、二枚貝、相互作用、ゲノム解析

CONTACT

【現所属】三重大学 大学院生物資源学研究科生物圏生命科学専攻
【旧所属】佐賀大学総合分析実験センター(令和5年3月末迄)

MAIL mizutani@bio.mie-u.ac.jp ※@を半角にしてください

研究概要

有明海の生物の不思議を解明し、再現することで、 地域産業への貢献を目指しています。 有明海に生きる生物の細菌やウイルスを研究
私は学生の頃から貝の共生菌の研究を行っています。現在は有明海に生息している生物の中から、特に食用品として関わりの深い海苔や二枚貝を対象に、これらと共在している微生物の探索及び機能解明を行っています。

■海苔に存在する新たなウイルスを発見
海苔や二枚貝の中から目で見えない微生物を探すために、これらの微生物が持っているDNAやRNAなどの遺伝情報を抽出し、どのような細菌やウイルスが生息しているのかを解析してきました。
その結果、海苔には同じ機能を持つ複数の細菌種が定着しており、これらの細菌はビタミンや植物ホルモンなどの有用物質の合成遺伝子をもっていることがわかりました。新たに発見したMitovirusに関しては、加工前の生海苔や私たちが普段食べている乾海苔に関係なく、有明海のすべての海苔に存在していることがわかっています。Mitovirusに分類されるウイルスは親から子へと垂直伝播で広がっていくという特徴をもっているため、今回発見したウイルスも長期間にわたって宿主である海苔の細胞内に存在し、海苔に何らかの影響を与えて共生関係を築いている可能性があることが考えられます。これらの細菌やウィルスの働きを解析し、培養実験によって良い働きをする微生物を選びだし、解析した機能を再現することで、海苔の栄養価を向上させたり、色を濃くするなど、養殖海苔の商品価値を高めることが可能になるのではないかと期待しています。
また二枚貝においても、特定の貝に生息している細菌の中には、貝にとっては害となる硫化水素を無毒化する代謝機能があるのではないかと研究を続けています。

■恵まれた研究環境を活かし、地域に還元する
佐賀大学では、以前から有明海研究が行われてきました。生物に限らず、環境保全、文化など様々な方面で情報交換しながら研究が行われているため、大変恵まれた研究環境と言えます。また私が所属する総合分析実験センターには多くの専門設備が揃い、十分に活用できるということも、研究を進めていく上で大変重要なことです。
今後はこの環境を活かし、有明海の特徴的な微生物と宿主との関係性をさらに解明・再現し、養殖業へと応用させていくことを目指しています。

  • 海苔共生微生物の研究方法

  • 予想される二枚貝共生細菌の機能

MESSAGE

技術の発展に伴い、遺伝子情報という形で不思議な生物が続々と発見されています。それでも、まだまだ多くの謎が残っているのが生物学の世界です。特に有明海には、日本ではここでしか見られない生物がいたりと、新しい発見が多い環境です。一緒に有明海生物の不思議を解明しませんか。

主要業績

  1. Yukino Mizutani, Tetsushi Mori, Taeko Miyazaki, Satoshi Fukuzaki, Reiji Tanaka. Microbial community analysis in the gills of abalones suggested possible dominance of epsilonproteobacterium in Haliotis gigantea. PeerJ. 8:e9326 2020.
  2. Yukino Mizutani, Shunpei Iehata, Tetsushi Mori, Ryota Oh, Satoshi Fukuzaki, Reiji Tanaka. Diversity, enumeration and isolation of Arcobacter spp. in the giant abalone, Haliotis gigantea. MicrobiologyOpen. 8:e890. DOI: 10.1002/mbo3.890. 2019.
  3. Yukino Mizutani, Reiji Tanaka. Genome Sequence of Arcobacter sp. strain LA11, isolated from the abalone Haliotis discus. Genome Announc. DOI: 10.1128/genomeA. 00032-17. 2017.
  4. Reiji Tanaka, Ilse Cleenwerck, Yukino Mizutani, Shunpei Iehata, Peter Bossier, Peter Vandamme. Arcobacter haliotis sp. nov., isolated from abalone species Haliotis gigantea. Int J Syst Evol Microbiol. 67:3050-3056. 2017.
  5. Reiji Tanaka, Yukino Mizutani, Toshiyuki Shibata, Hideo Miyake, Shunpei Iehata, Tetsushi Mori, Kouichi Kuroda, Mitsuyoshi Ueda. Genome sequence of Formosa haliotis strain MA1, a brown alga-degrading bacterium isolated from the gut of abalone Haliotis gigantea. Genome Announc. 4: e01312-16. 2016.

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