研究概要
プロセスコンサルテーションを用い、地域の人たちと共に持続可能な地域振興・産業振興を目指しています。 経験と実績を活かし、研究に取り組む
私はこれまで、デザイナーとして製品デザインや景観設計、伝統的工芸品の商品開発などに携わってきました。商品のスタイリングにとどまらず企画から販売まで幅広く行ってきたことを高く評価され、現在はその経験と実績を活かした研究を行っています。一般的に商品開発の現場では短期間な利益を目的とした取組になりがちですが、地域振興や産業振興と同様にしっかりと腰を据えた継続的な取組を行うことが肝要です。佐賀大学での研究においては、そのような姿勢が大事であると考えています。
■社会課題解決のためのデザイン
一般的にデザインというと製品のスタイリングと捉えがちですが、デザインの役割とプロセスの大部分は、その時々の社会や事業が直面する課題の解決にあると考えています。有田で言うなら、有田焼の新規市場の開拓が喫緊の課題です。有田焼の強みは卓越した技術力と多彩な表現力、400年の歴史の中で培われた美意識と芸術性です。その素晴らしさを食器以外の市場にもいかせるのではないかと考え、令和3年度から本格始動させた研究が、有田焼と芸術分野をコラボレーションさせた「Arita×Sogetsu」です。㈱ARITA PLUSといけばな草月流華道家とが協働で花器を開発し、東京にて研究発表展を開催しました。華道家と協議しながら最終的には製品化までつなげ、新規市場を開拓するとともに、新しい芸術表現の発露も目標としています。
地域振興の面では、日本の棚田百選にも選ばれた岳の棚田にひまわり迷路を作り、地元の方々をはじめ多くの方にご来場いただきました。有田の良さを知っていただき、有田の新たな魅力を発掘するために、学生や地元の人たちと力を合わせて取り組んでいます。
また、私は学校給食用食器の調査研究にも取り組んでいます。なぜなら学校給食の現場では未だに多くのプラスチック食器が使用されており、強化磁器製食器の採用率は低いからです。
■継続的に取り組むためのプロセスコンサルテーション
地域振興、産業振興ともに当事者の力が何より不可欠であるため、私の研究・活動ではプロセスコンサルテーションという支援方法を用いています。決して研究者や専門家の一方的な押し付けにならず、有田焼の職人や地域の人々と信頼関係を築き、対等な立場で意見を交わし、当事者が自ら考え、発想し、行動することを促していきます。
この支援方法を用いた研究を続けることで、地域や産業の自立と継続的な活動につながることを期待しています。
MESSAGE
令和3年度に本格始動した研究「Arita×Sougetsu」では、有田焼窯元(㈱ARITA PLUS)が芸術分野(いけばな草月流)と協働で花器を開発、最終的には製品化にまでつなげ、新規市場を開拓することを目標としています。またこれまでに、有田キャンパスにおいて、技術・表現力の高い華道家が窯業者・佐賀大学教員・学生を対象にいけばなデモンストレーションやいけばな体験教室を行いました。
今後、有田焼の新たな市場開拓につながる他分野とのコラボレーションを期待するとともに、若い世代に日本の文化や伝統に興味や関心を集めることで、次の世代の産地の後継者が生まれることを期待しています。
主要業績
- 『いただきます スプーンをつくる』医療機関との協働作業による高齢者のためのスプーン開発 2018年
- 『BAIKAMO』伝統的工芸品活用フォーラム事業 越前和紙 2012
- 『ORE』伝統的工芸品活用フォーラム事業 江戸切子 2010年
- 『KARMI』伝統的工芸品活用フォーラム事業 山中漆器 2009年
- 『SABON』伝統的工芸品活用フォーラム事業 別府竹細工 2008年