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外国語教育における高大接続に向けた発話自動採点システムの構築と運用

教育学部 学校教育課程 言語・社会系グループ

林 裕子 准教授

Hayashi Yuko

博士(教育・応用言語学)

研究分野

応用言語学、言語テスティング、外国語教育

キーワード

自動採点、発話自動採点システム、英語スピーキング、タスク、明瞭性

CONTACT

教育学部 学校教育課程 言語・社会系グループ

FAX 0952-28-8255 / MAIL yhayashi

研究概要

「話す」能力の自動採点システムを構築し教室環境での運用を可能にしました 小規模な取り組みで、より精度の高いシステムに
私たちは、外国語教育、言語テスティング、情報工学などの専門家と力を合わせ、高校生と大学生の外国語教育における発話自動採点システムの構築とその運用を研究しています。

タブレットやPCで「話す」能力を評価
外国語教育では、小・中・高を通じて4技能「聞く」「読む」「話す」「書く」の総合的育成を図る実践が進められています。ただ「話す」能力の直接的な評価に関しては、人的・時間的コストの面からも継続的な実施が困難であり、指導と評価が一体化した高大接続を阻む壁となっています。このような現状の課題を緩和・解決する方法の一つとして挙げられるのが、自動採点システムの導入です。
このシステムには、2つの目的があります。
1. CBT(Computer Based Testing:パソコンやタブレット端末を使って行う試験)方式を用いて、学習者の英語スピーキング能力を精確に推定する発話自動採点システムを構築すること。
2.ソフトウェアとして実用化した同システムを研究協力者(高校・大学教員)の授業で使用し、教室環境での評価や教員によるフィードバックとの整合性を検証し、外国語教育における本システムの導入を検討・提案すること。

スピーキング能力の測定には、有意味な文脈において言語教育に寄与する発話データを収集できる実用的なタスクである「談話完成タスク」(DCT)を用いました。さらに、複数のやり取り(turn-taking)からなるDCTを用いることで、学習者の1回目の回答に応じて2回目以降の質問が自動で提示されるシステムを構築し、現実に即した文脈でより精度が高く、包括的な自動評価を行います。現在では発話自動採点システムの整合性も高くなり、実際の教員と83%の一致を確認しています。

限られた予算で、学際性の高い取り組みを
本研究は限られた予算を活かした基盤研究としての取組ではありながら、情報工学やプログラミング、知能システムなど多分野の専門家との学際的な取り組みを行うことで、教室環境で使用できるだけの精度を備えた自動採点システムを構築できているのが大きな特徴と言えます。
将来的には、開発企業と連携して実用化した同システムを、外国語教育における高大接続に向けて具体的な提案を行うことを目指しており、今後も、国内外の研究者、教育関係者、企業と情報交換や連携を図りながら、より良いシステムの構築と運用に向けた研究を展開していきたいと考えています。

MESSAGE

外国語教育では、小・中・高を通じて4技能(聞く、読む、話す、書く)の総合的育成を図る実践が進められています。その一方で、高等学校と大学の間では、教員同士が情報共有や意見交換を行い学修内容や評価の一貫性に向けて協働するといった「直接的で継続的な(強度の)連携」の例は少なく、指導と評価が一体化した高大接続には課題が多く残されています。特に「話す」能力の評価は、信頼性や時間と労力の面から継続的な実施は容易ではありません。このような現状の課題を緩和・解決する方法の一つとして、自動採点システムの導入が挙げられます。小規模の取組ではありますが、その学際性の高さを活かし、教室環境で使用できるだけの精度を備えた自動採点システムを構築することができています。今後も、国内外の研究者、教育関係者、企業と情報交換や連携を図りながら、より良いシステムの構築と運用に向けた研究を展開していきたいと思います。ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。