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がん間質の微小環境が癌の細胞動態に与える影響についての研究

医学部附属病院 泌尿器科学・探索病理学

川﨑 麻己 助教

Kawasaki Maki

博士(医学)

研究分野

泌尿器癌、脂肪細胞、癌微小環境、排尿機能、骨盤臓器脱

キーワード

癌微小環境、間葉系幹細胞幹細胞、3Dコラーゲンゲル培養

CONTACT

医学部附属病院 泌尿器科学・探索病理学

TEL 0952-34-2344 / FAX 0952-34-2060 / MAIL kawasakm

研究概要

脂肪組織の生物機能を解明し、新しい医療技術を探索します。 脂肪組織が癌に与える影響を研究
膀胱癌には周囲に浸潤する癌と、浸潤せず膀胱の内部で再発を繰り返す癌があります。この挙動の違いを解明するために、癌細胞に大きな生物的影響を与えるとされる脂肪組織、および脂肪組織内部の間質細胞に着目した研究を行っています。

■独自の3Dコラーゲン培養システムを活用
脂肪組織はメタボリック症候群において、中心的な役割を担う臓器です。最近、メタボリック症候群と癌との関連が報告され、さらに、脂肪組織はがん細胞の生存とにとって特殊な細胞を供給することが明らかとなりました。そこで私たちは、腎臓や膀胱の周囲に多量に存在する脂肪細胞に着目し、腎尿細管細胞・腎癌・尿路上皮癌・前立腺癌との相互作用について研究してきました。
私達の研究で活躍しているのが、独自に開発した3Dコラーゲンゲル培養システムです。この方法はシンプルですが、従来の方法では難しかった、培養した癌組織に抗がん剤や分子標的薬の投与や放射線の照射を簡単に行うことができ、その効果を組織形態の変化を含め、様々な医学的な解析を行うことができます。
今後は、たんぱく解析や遺伝子解析などを専門的に行っている研究機関などと協力していくことで、さらにこの研究を発展させ、癌に対する新しい治療ターゲットの探索に結び付けていくことを目指しています。

■脂肪組織の可能性
脂肪組織を用いた医療応用の可能性は無限大です。脂肪組織から抽出した間質細胞は高い分化能を持っており、癌治療から再生医療まで多くの分野に応用できる潜在力を秘めています。
今後は、癌に対する分子標的薬の開発にとどまらず、骨盤底筋や支持組織の脆弱化が原因で起こる尿失禁・骨盤臓器脱(女性)・前立腺癌術後の尿失禁(男性)などの再生医療としての利用も検討しているところです。

大学の研究室の魅力は、好きなテーマに取り組めるところです。すぐに結果が出ることが少なくても、自分自身が持つ疑問や興味に正面から向き合うことで、モチベーションも上がり、結婚や出産や介護といったライフイベントの際にも研究を続けていくことが可能です。たとえ自分で研究を完結させることができなくても、協力してくれる研究者は必ずいます。とくに、研究機関・企業とコラボし、研究を次のステップへと導き、社会実装へとつなげていくことが私たちの強みだと考えています。

MESSAGE

脂肪組織の可能性は無限大です。脂肪組織から抽出した間質細胞は、さまざまな分化能を持っており、癌から再生医療までさまざまな分野に応用できる可能性を秘めています。基礎研究から臨床の治療現場へつながるような研究を目指してます。
一緒に奥深い脂肪の世界を研究しませんか。

主要業績

  1. Udo K, Aoki S, Uchihashi K, Kawasaki M, Matsunobu A, Tokuda Y, Ootani A, Toda S, Uozumi J. Adipose tissue explants and MDCK cells reciprocally regulate their morphogenesis in coculture Kidney Int 78: 60-68, 2010
  2. Maki Kawasaki-Nanri et al.:Differential effects of adipose tissue stromal cells on the apoptosis,growth and invasion of bladder urothelial carcinoma between the superficial and invasive types. International Journal of Urology (2016) 23, 510-519
  3. 有働和馬, 南里麻己,東武昇平,野口満:脂肪組織と尿細管上皮/尿路上皮との相互作用.泌尿器外科(2017) 30(2):111-116.
  4. Kawasaki M, Aoki S et al. Bystander effects induced by the interaction between urothelial cancer cells and irradiated adipose tissue-derived stromal cells in urothelial carcinoma. Hum Cell. (2022)35:613-627
  5. 川﨑麻己ほか:尿路上皮がんと脂肪細胞の相互作用. 泌尿器科(2022)15(4) : 1-9

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