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HIV感染からくる認知機能・IADL機能低下(HAND)の早期発見に役立つスクリーニング検査の開発

医学部附属地域医療科学教育研究センター

医学教育開発部門

坂本 麻衣子 准教授

Maiko Sakamoto Pomeroy

博士(哲学)

研究分野

神経心理学、臨床心理学、行動医学

キーワード

神経心理学、認知機能、ADL・IADL、HIV、Neurorehabilitation

CONTACT

医学部附属地域医療科学教育研究センター 医学教育開発部門

FAX 0952-34-2204 / MAIL masaka

研究概要

タッチパネルのスクリーニング検査で様々な認知症認知機能障害の早期発見を目指します 神経心理学を日本社会で活かす
私はアメリカの大学院に進学し、学位(M.A, M.S, PhD)と資格(Movement Therapist, Clinical Psychologist, Neuropsychologist)を取得し、神経心理学の臨床・研究・教育に従事していました。神経心理学はアメリカで発展を遂げた医学領域で、脳機能と感情・行動について研究する分野ですが、日本ではまだまだ認知度が低く、アメリカのように臨床心理学をバックグラウンドとする専門家はごくわずかです。

■早期発見のためのスクリーニング検査
私は、アメリカで得た経験と知識をフルに活かし、認知機能の低下を早期発見するために2つの柱で研究を続けています。
一つ目は、日本人向けの認知機能検査の開発です。アメリカで行っていた認知機能検査の研究・開発の知識をもとに、一から日本語・日本文化に適応させたものです。今は、日本人向け言語記憶検査の標準値の構築に取り組んでいるところです。
二つ目は、HIV感染からくる認知機能や日常生活の機能低下(HAND)を早期発見するためのタッチパネル式スクリーニング検査の開発です。患者さんの検査の得点で判断することが通常の評価方法ですが、HIV感染者は特有の動作エラーを起こすことが認められたことから、そのエラーを評価・解析することで、今まで以上に早期発見につながると考えられます。今後はVRなども活用しながら、さらに研究を深めていく予定です。
また、日本が超高齢化社会に向かっていく中で、お年寄りが自立して健康な毎日を過ごすためには予防が大切になってきます。MCIや認知症は早期発見・早期介入で進行を防ぐことができますが、その早期発見の方法の一つとしても、このタッチパネル検査が役立つと考えています。

タッチパネルを使った検査を行うことで、マンパワーが不足している医療現場や遠隔での診断が可能になると同時に、検査を受けたがらない人にもゲーム感覚で気軽に検査を促すことができるというメリットもあり、それが早期発見への可能性につながっていくと考えられます。また、モーションキャプチャーやカメラなどをつけることで指先の動きや動作を解析することもでき、早期発見・早期介入への期待が高まります。

■神経心理学の観点からできること
スクリーニング検査の研究のほかにも、医療心理学や医療倫理、医学教育にも携わり、医学生の倫理観やプロフェッショナリズム、6年間における自己主導型学習能力の変化などについても研究しています。現在は、新型コロナ感染拡大を受け、精神面や学習に問題を抱える学生のケアをするという重要な役割も担っています。
また、海外で過ごした経験をもとに、語学留学や海外でのキャリア形成を目指す医学生の相談に乗ったり、個々人が「人として」平等に仕事に取り組めるよう、ダイバーシティ活動にも力を入れ、家庭と仕事の両立や女性の上位職の普及、女性の働きやすい環境づくりなどにも取り組むなど、多岐にわたって情報も発信しています。

神経心理学は日本ではこれから伸びていく学問です。認知症検査や脳ドッグなどの認知促進や導入促進に取り組んだり、INS(国際神経心理学会)では初めてのアジア大会の大会長を務めるなど、幅広い視野で積極的に活動しているところです。

MESSAGE

海外で活躍できる人材、そして高いモティベーションを持つ研究者・教育者が平等に活躍できる場を構築できるように一緒に頑張りましょう。

主要業績

  1. Thaler, N. & Sakamoto Pomeroy, M. (2022). Neuropsychological Considerations with Japanese Patients. Cultural Diversity in Neuropsychological Assessment: Developing Understanding through Global Case Studies. pp. 228-240. Routledge, Tylor & Francis Group. (DOI: 10.4324/9781003051862-31)
  2. Komatsu K, Kinai E, Sakamoto M, Taniguchi T, Nakao A, Sakata T, Iizuka A, Koyama T, Ogata T, Inui A, Oka S. (2019). Various associations of aging and long-term HIV infection with different neurocognitive functions: Detailed analysis of a Japanese nationwide multicenter study. Journal of NeuroVirology, 25(2), 208-220.
  3. Sakamoto, M. (2016). Neuropsychology in Japan: history, current challenges, and future prospects. The Clinical Neuropsychologist, 30(8), 1278-1295.
  4. Sakamoto, M., Hilsabeck, C.R., Hammel, M., Barakat, F., Hassanein, T., & Perry, W. (2015). Neuropsychological functioning among individuals infected with hepatitis C: A comparison on pre- and post-transplant performance. Neuropsychological Trends, 17, 67-83.
  5. Sakamoto, M., Marcotte, T.D., Umlauf, A., Franklin, D., Heaton, R.K., Ellis, R.J. et al. (2013). Classification accuracy of HIV dementia Scale in a large, well-characterized HIV-seropositive cohort. Journal of Acquired Immunodeficiency Syndromes, 62(1), 36-42.

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