研究概要
社会によりよい薬物療法を届けるため、 基礎と臨床を融合させながら研究しています。 予防医学と臨床薬理の融合
私は、より安全性と有効性の高い薬物療法の確立を目的として、予防医学と臨床薬理を融合させながら研究を行っています。融合させることで、病態メカニズムの解明や新しい薬物療法につながるエビデンスを得ることができると考えているからです。
■遺伝的・環境的要因+健康行動+バイオマーカー
遺伝的・環境的要因や健康行動により変化するバイオマーカーをターゲットにした研究を続けてきました。人々の健康では、身体的健康と精神的健康が複雑に影響しあいながら疾病に関与していますが、身体疾患の発症につながるストレスを客観的に評価することは難しいと考えられています。近年、私たちの研究で、11β-水酸化ステロイド脱水素酵素活性を反映する尿中のコルチゾール/コルチゾン比がストレスマーカーとして応用できることがわかってきました。このようなバイオマーカーについて、疾患との関連やリスクマーカーとしての意義を明らかにすることで、心と体のクロストークによる疾患発症メカニズムの解明、新しい薬の開発、および疾患の発症/重篤化の予防へと繋がることが期待されます。
■病気との共存に有用な薬物療法の確立
現代社会の高齢化が進む中で「病気にならない」ということは困難なことです。したがって、予防の段階から病気と向き合うこと、また病気になってしまった時に「病気とどう付き合っていくか」、「重篤化をどう予防するか」など、暮らしの中で病気と共存していくのに役立つ薬物療法の確立はますます重要になっていきます。
私たちが目的とする「有効性の高い安全な薬物療法」を提供するためには、信頼性の高いエビデンスが必須です。そのため、佐賀大学で行っている大規模コホート研究や臨床の有害事象などのビッグデータを活用しながら研究を行ってきました。今後はさらに、疫学的な手法を用いて、バイオインフォマティクスやファーマコメトリクス、あるいは様々な臨床分野の専門家と協力しながら、患者さんの未来を変える研究に取り組んでいきたいと考えています。
MESSAGE
有効で、安全性の高い薬物療法を提供するためには、信頼性の高いエビデンスを創出するための研究が必須です。病気で苦しむ患者さんに向けて「よりよい医療」を届けるために、「予防と治療」、「基礎と臨床」を融合させながら日々研究に取り組んでいきます。
主要業績
- Sogawa R, Shimanoe C, Tanaka K, ...Wakai K, Matsuo K. Sex- and age-specific all-cause mortality in insomnia with hypnotics: Findings from Japan multi-institutional Collaborative Cohort Study. Sleep Medicine. 2022, 100:410-418.
- Shimanoe, C., Matsumoto, A., Hara, M., ...Higaki, Y., Tanaka, K.Perceived stress, depressive symptoms, and cortisol-to-cortisone ratio in spot urine in 6878 older adults. Psychoneuroendocrinology, 2021, 125, 105125.
- Shimanoe, C., Hachiya, T., Hara, M., ...Naito, M., Wakai, K. A genome-wide association study of coping behaviors suggests FBXO45 is associated with emotional expression. Genes, Brain and Behavior, 2019, 18(2), e12481
- Shimanoe, C., Hara, M., Nishida, Y., ...Higaki, Y., Tanaka, K.Coping strategy and social support modify the association between perceived stress and C-reactive protein: a longitudinal study of healthy men and women. Stress, 2018, 21(3), 237–246
- Shimanoe, C., Hara, M., Nishida, Y., ...Higaki, Y., Tanaka, K.Perceived Stress, Depressive Symptoms, and Oxidative DNA Damage. Psychosomatic Medicine, 2018, 80(1), 28–33