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口腔粘膜における環境センサー分子の働きを明らかにして、
口腔の健康維持に貢献する

医学部 医学科

生体構造機能学講座

吉本 怜子 助教

Yoshimoto Reiko

博士(歯学)

研究分野

組織学、分子細胞生物学

キーワード

口腔粘膜、イオンチャネル、創傷治癒モデル、細胞骨格

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医学部 医学科 生体構造機能学講座

研究概要

口腔粘膜のイオンチャネル研究を通して、健康維持に貢献することを目指しています。 口腔粘膜の不思議さを研究
口腔粘膜は、口の適正な働きを支えています。私は、ヒトの口腔粘膜におけるイオンチャネルの役割を研究していく中で、口腔粘膜の痛みや乾燥感を訴える患者さんでは温度で活性化するイオンチャネルの発現が変化していることを見つけました。顕微鏡を観察しながら違いを見つけたときの、驚きとわくわくする感覚が心に残り、多様な刺激を受け鋭敏に反応する口腔の不思議さを研究しています。

■イオンチャネルTRPV4の可能性
口腔粘膜は、皮膚と構造は似ていますが、食物などで傷がつきやすい一方でとても治りやすく、瘢痕ができないことから理想的な治癒形態と考えられています。しかし、まだその機構は十分に判っていません。
私たちは、口腔が身体の他の部位と異なる温度環境にあることに着目し、温度感受性のイオンチャネルが口腔粘膜の治癒に大切な働きをしているのではないかと考えています。現在は、創傷治癒過程や歯周病のマウスモデルを用いて病態モデルとの関連を調べたり、細胞骨格分子に着目して免疫組織化学と高解像度のイメージングによる解析を行うなど、TRPV4が細胞・組織レベルでどう働いているのか、そのメカニズムを明らかにするために研究を続けているところです。
これまでの研究から、痛みのある口腔粘膜や歯周病、口腔癌などの病態に温度感受性のイオンチャネルTRPV4が関わることを報告しています。


■研究の魅力
私たちの研究室は、免疫染色等で組織中の分子を可視化し、超解像顕微鏡で観察する手法を特徴としています。微細な構造を観察できる顕微鏡で映し出される細胞や組織は精巧で美しく、実験をすればするほど新しい発見があり、興味が尽きることはありません。近年はデジタル化やAIのような技術が進歩してきたことから、これまで私たちが地道に積み重ねてきたデータからさらに多くのことを見出せる可能性もあります。
子育てをしながら研究を続けられる環境に感謝しつつ、知的好奇心に従って貪欲に挑んでいきたいと考えています。

  • (1)マウス歯肉と歯の接合部における β-catenin (緑), F-アクチン (マゼンタ), 核 (青) の局在
    (2)マウス口腔粘膜におけるF-アクチン (緑) の局在
    (3)ヒト口腔粘膜の hematoxylin-eosin 染色像
    (4)マウス口腔粘膜上皮初代培養細胞の位相差顕微鏡像
    (5)マウス口腔粘膜上皮初代培養細胞における細胞骨格Cytokeratin14の発現
    (6)マウス口腔粘膜上皮初代培養細胞におけるTRPV4 (緑), F-アクチン (水色) , α-Tubulin (マゼンタ) の超解像イメージ

MESSAGE

私たちの研究成果が口腔の健康維持に貢献できることを願って、日々研究に邁進しています。