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保育実践における多様な幼児の「所属感」が保障された集団づくりに関する研究

教育学部

幼小連携教育コース

名倉 一美 准教授

Nagura Kazumi

博士(教育学)

研究分野

保育学、幼児教育学

キーワード

所属感、居場所感、インクルーシブ保育、多文化共生保育、幼児アセスメント

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教育学部 幼小連携教育コース

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研究概要

幼児の所属感を研究し、集団づくりの質の向上につなげる 幼児の所属感の実態を把握するための研究です。
私は、保育実践における幼児の集団づくりの質に関する研究を行っています。保育施設で集団生活を送る幼児にとって、自分のクラス集団に「居場所」があると感じているかどうかは、情緒の安定に大きな影響を与えます。「居場所がない」と感じている幼児は、常に疎外感を感じながら生活をしており、保育者にはこうした幼児を見落とさず、適切な対応をすることが求められます。

これからの保育実践のカギを握るのは「所属感=sense of belonging」。
子どもの発達において「居場所づくり」の大切さはよく説かれていますが、私は居場所という曖昧で広い範囲ではなく、人間関係を築いていくための「所属感=sense of belonging」という視点から研究を行っています。これはニュージーランドのような多民族国家においては保育政策にも取り入れられていることですが、日本においてはまだ馴染みが少ない概念です。しかし、年々多様化している日本における今後のインクルーシブ保育・多文化共生保育を検討するにあたっても、この「所属感=sense of belonging」の概念を用いることが実践の質の向上につながると考えています。

保育実践で活用できるアセスメントツールを開発。
研究においては幼児の実態調査が重要になりますが、日本でこの視点から保育実践をとらえる研究者がごくわずかであること、言語化が不十分であったり情緒コントロールが未熟な幼児へのヒアリングが困難であることから、大変難しいものになりました。多くの幼児と保育者に丁寧に聞き取りを行い、言動を観察することで信頼性を高め、慎重に研究を行ってきました。
その研究を集約して開発に取り組んでいるのが、幼児の集団所属感を見定めるための2つのアセスメントツールです。
この2つのアセスメントツールには、2つの目的があります。
一つ目は子どもへのアプローチで、子どもたちの心の状態や実態をより正確に把握することです。
二つ目は保育者へのアプローチで、目には見えない所属感を言語化することで保育者に気づきを与え、保育の質・集団づくりの質を向上させることです。

今後は、このアセスメントツールの信憑性、有用性をさらに検証していくことが課題となっていきます。そのための一つの方法として、発達のゆっくりした子どもや外国から来日してきた多文化の子どもなど、所属感を持ちにくいであろうと考えられる多様な子どもたちが共に生活をしている集団保育に着目し、彼らの集団所属感を把握するための研究を行っているところです。
また、国籍や環境などが多様化している日本社会を背景に、外国にルーツがある上に発達がゆっくりとした子どもなど、ダブルで支援を必要とする子どもも増えていると感じています。彼らの所属感にも注目し、その実態調査の共同研究にも取り組んでいます。

MESSAGE

「Belong(所属)」の概念は、既に多民族国家のニュージーランド等の保育政策に取り入れられています。こうした国々では、多様な価値観を持つ人々の共生社会の実現が重要な政策課題であり、そのためこの「Belong(所属)」の概念が、幼児期の教育から用いられていると考えられます。今後、日本のインクルーシブ保育・多文化共生保育を検討するにあたっても、この「Belong(所属)」の概念を用いることが、実践の質の向上に活用できるのではないかと考えています。その第一歩として、「Belong(所属)」の視点から日本の保育実践を捉えることに挑戦しています。

主要業績

  1. 名倉 一美(2023) 幼児の集団所属感アセスメントツールの有用性の検証-5歳児転入児がクラス集団へ抱く所属感の変化過程分析から-. 保育者養成教育研究, 7, 25-35.
  2. 名倉 一美・古田 真司(2018) 保育実践における幼児の集団所属感に関する研究 : 卒園前の5歳児インタビュー調査から.人間教育と福祉,7, 47-59.
  3. 名倉一美・二井紀美子(2018) 外国にルーツをもつ発達の気になる幼児の就園状況と支援体制の実態調査 : 愛知県東部・静岡県西部を対象に.乳幼児教育学研究, 27, 23-33
  4. 名倉一美(2018) 保育実践における幼児の集団づくりに関する一考察.教科開発学論集,(6),189-195.
  5. 名倉一美(2017) 5歳児の育ち合い保育実践を通して保育者が期待している効果:「社会的自己調整能力」と「集団所属感」に注目して. 教科開発学論集, (5), 33-42.

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